ストーリー ① 大都会上海である晩の出来事

若い女性が私にティッシュを一枚渡してくれました。その晩私は静安寺近くの食事会で飲み過ぎて、帰りの地下鉄の駅へ向かう途中の路上でうずくまっていたところでした。その見知らぬ女性は「助けは必要ですか(需要帮助吗)」と言ってくれました。もちろん私が日本人であることは知りませんでした。

 

なぜそんなに優しくしてくれるのか不思議だったので、知り合いかなと思いながら話をしましたが全く初めて会う人でした。その女性の発音からして上海の地元の人だったと思います。

 

なぜ声をかけてくれたのか聞くのも変な気がしたので、代わりに「今日はどこに行った帰りですか?」と聞くと、女性は「親戚のお墓参りで上海市青浦区に行ってきた帰りですよ」と言いました。

 

その時、私はもう大丈夫だったので「お礼に今度お茶でもご馳走します」と聞きましたが、女性は「全然気にしなくて大丈夫ですよ」と言って、私の服が汚れてるのを見てポケットティッシュ(紙巾zhi jin/餐庁紙can ting zhi)を開けてこれも使ってと1個くれました。ちなみに、日本では街でよくポケットティッシュを無料配布していますが、中国ではみんなスーパー等で1包1元程で買うのが一般的だったと思います。10年前の上海は百貨店のトイレに紙がなかったので必需品でした。

 

お礼を言って駅に向かおうとすると、その女性は最後まで気を付けて帰ってと見届けてくれました。人が溢れる大都会でこんなに周りのことを気にする女神のような人がいるのかと、理解が追い着きませんでした。あの人はどこの誰だったのか未だに不思議に思います。

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中国のポケットティッシュ(1枚がハンカチくらいの大きさ)